夢の終わりに

第 15 話


数百年前。まだ俺が人間だった頃の友人であり、悪逆皇帝の騎士として誰もが知っているな枢木スザクそっくりな若者と、その夜は楽しく酒を酌み交わし、客でギュウギュウ詰めだった昨日とはうって変わり、スッカスカになった宿の一室で二人揃って爆睡し、危うく始発を乗り過ごす所だった。
お互いに旅をしているバックパッカーだから、話しの内容は旅の話ばかりで、あの国のあれは美味しかったとか、あの国のビールはおいしかったとか・・・国というより食べ物の話ばかりしていた。
不老不死の体になると、子孫を残す必要はないからか性欲は激減。残るは睡眠欲と食欲で、そのうち食欲が以前よりも強くなっている気がする。そういえば先代も会うたびにピザを毎回ねだってきてたから、不老不死とはそういうものかもしれない。どれだけ時間が経っても、美味い物は美味いことに変わりは無い。だから旅の目的地など、あの国のあれが美味しかったからまた行こうかな?というのが殆どだ。旅をするのに飽きれば食べ物のおいしい土地に2.3年に住み着く事もあるぐらいだ。
まあ、そんな話題で酒場が閉店するぎりぎりまで飲み、宿で寝てバスに揺られて。そうなれば当然襲ってくるのは二日酔いで。悪路で揺られるのも相まって俺はぐったりと座席に沈んでいた。あれだけ飲んでたスザクはけろっとしているから、ああこれが若さかと、どーせ不老不死になるなら20代でなりたかったなぁと心の底から思った。
まあ、彼女を見つけてコードを受け継ぐ器に成長したのがこの年なんだから仕方ないんだけど・・・。それでも羨ましいものは羨ましい。翌日に酒を引きずらない若さが羨ましい!油に負けない胃袋も羨ましい!俺もこのぐらいの年齢なら平然としていたはずだ。多分。
そうして揺られる事6時間。目的の場所についたが、結局船に乗る事が出来なかった。ここに来るまでの道はどうにか大丈夫だったが、台風による川の増水が想像以上にひどく、船を出せないのだ。「結局足止めかよ」とうなだれる俺と「仕方ないよ、宿空いてる所がないか探そう?」と笑うスザク。昨日会ったときとは真逆の楽しげな笑顔だったから、そうだな、悲観してても渡れないものは渡れないし、それより今日の宿と酒と食事の方が大事だと、二人で宿を探し歩いた。
結果的には、これが大正解。
宿は何処を探しても開いておらず、あーどうしよう?漁協の人とかに話をつけて倉庫に泊めさせてもらおうか?魚臭いけど。と笑いながら、とりあえず人気のない場所も探そうという事になった。メインストリートの宿は全滅だが、人の入らない所にある宿はまだ空いている可能性があるからだ。
人が通らないだろう場所を選んで進み、それらしい場所を探す。実はこの町に来るのは初めてではないため、確かこっちの外れにちょっとした店や宿があったような?と、あの頃の記憶を総動員させて歩いていた。何年前に来たかなんて覚えてない。少なくても10年は来ていないから、とっくに潰れている可能性はある。
それでも、空き部屋ができる可能性ゼロな表通りより希望はあるし、いざとなったら民家に声をかけて泊めてもらえばいい。俺はともかく、スザクなら意外とOKもらえそうな気がする。
そんな事を考えながら歩いていると、誰かの声が聞こえた気がした。
それはスザクも同じなようで、立ち止まり険しい表情で辺りを見回していた。そして、話しかけるよりも早くスザクは駆けだしていた。もしかして何かやばい事でも?と思い、俺も慌てて追いかける。荷物をすべて詰め込んでいるバックパックは重く、走るには向かないが、それでも風のように駆けていくスザクを見失わないよう右へ左へと必死に走ると、いつの間にあんなとこまで走ったんだよ!?とつっこみたいぐらい遠くまで進んでいたスザクは、迷うことなく建物に蹴りを入れた。大きな音が辺りに響き、あ!これ扉を壊した!絶対壊した!なんだよ?何があったんだよ!?と、酸欠になりかけた頭で必死にその場所にたどり着いた。寂れて誰も立ち寄らなそうな場所だったが、扉を壊した音は大きく、それに気付いた近隣の住人が集まってきた。これはやばい・・・が、とにかくスザクだ。あいつは人間なんだから、簡単に死んじまう。やばい連中相手なら俺が・・・!そう思い扉の壊れた薄汚い建物に駆けこんだ。
そこにいたのは、何人もの男たちを気絶させたスザクと、そんな状況に驚き声を無くしていた若者だった。
俺は思わず息を呑んだ。
スザクの強さにではない。その若者の姿にだ。
ルルーシュだ。
記憶の中にあるルルーシュが、そこにいた。
あの頃の姿そのままのルルーシュが。
茫然とした表情でスザクと、俺と、周りに倒れている男たちを見ていた。
身なりから観光客だと解るルルーシュは、恐らく俺達と同じでここで足止めを食らったのだろう。そしてその目立つ顔のせいか、何人もの男たちにここへ連れ込まれたところだった。

Page Top